
ビジネスメールや電話、日常のあいさつでよく使う「失礼いたします」。
しかし、「失礼致します」や「失礼到します」と書いてしまう人も意外と多いですよね。
実はこの3つ、見た目は似ていても意味も文法もまったく違います。
この記事では、「失礼いたします」「失礼致します」「到します」の正しい使い分け方をわかりやすく解説します。
さらに、「いたします」と「致します」の文法的な違い、「失礼します」との丁寧さの差、そして「お願い致します」などの誤用までしっかり整理。
この記事を読めば、あなたの敬語が一段と美しく、信頼感ある日本語に変わります。
正しい言葉づかいで、メールも会話もスマートにこなせる自分を目指しましょう。
失礼いたします・致します・到しますの違いをわかりやすく解説
「失礼いたします」「失礼致します」「失礼到します」は、どれも似て見えますが、実は意味も文法もまったく異なります。
ビジネスメールや電話、日常会話でよく使う表現だからこそ、正しい使い方を理解しておくことが大切です。
ここでは、それぞれの違いを文法的にわかりやすく整理していきます。
「失礼いたします」が正しい理由
「失礼いたします」は、正しい敬語表現です。
この「いたします」は、動詞「する」の謙譲語「いたす」に丁寧語「ます」を付けた形で、相手に対して敬意を表す言葉になります。
つまり「失礼いたします」は、「これから少し失礼します」という意味を丁寧に伝える言葉なのです。
退室時や電話を切る前、メールの締めくくりなどで使うと、品のある印象を与えられます。
ビジネスシーンでは常に『失礼いたします』が正解と覚えておきましょう。
| 場面 | 正しい使い方 |
|---|---|
| 退室時 | それでは、失礼いたします。 |
| 電話の終了時 | お時間をいただき、ありがとうございました。失礼いたします。 |
| メールの締め | 今後ともよろしくお願いいたします。失礼いたします。 |
「失礼致します」と書くと誤りになる文法的根拠
「失礼致します」と漢字で書いてしまう人も多いですが、これは文法上の誤りです。
なぜなら「致す」は「行う」「実行する」という意味を持つ本動詞であり、補助動詞として使う場合はひらがな表記が原則だからです。
文化庁の「敬語の指針」でも、補助動詞や助動詞はひらがなで書くのが望ましいとされています。
したがって、「失礼致します」は正しい日本語ではありません。
| 表現 | 正しい/誤り | 理由 |
|---|---|---|
| 失礼いたします | ◎ 正しい | 補助動詞「いたす」を使っているため |
| 失礼致します | ✖ 誤り | 本動詞「致す」を誤って使用している |
| 失礼到します | ✖ 完全な誤用 | 意味が異なる漢字を使用している |
「到します」は完全な誤用?間違いの原因と対策
「失礼到します」という表現を見かけることがありますが、これは完全な誤りです。
「到」は「到着」「到達」などの言葉で使われるように、「行き着く」「達する」という意味しか持ちません。
したがって、「いたす(する)」の代わりに「到す」を使うのは誤用です。
多くの場合、この間違いはIME(日本語入力システム)の自動変換ミスによって起こります。
特にビジネス文書では、変換後の表記をしっかり見直すことが信頼につながります。
「失礼到します」は絶対に使わないように注意しましょう。
| 誤用例 | 正しい表現 |
|---|---|
| 失礼到します。 | 失礼いたします。 |
| よろしく到します。 | よろしくお願いいたします。 |
この違いを理解しておくだけで、あなたの言葉遣いはぐっと上品になります。
特にメールの文末では、自動変換のまま送信せず、一度読み返す習慣をつけることが大切です。
「いたします」と「致します」の正しい使い分け方
「いたします」と「致します」はどちらも「する」の謙譲語ですが、使い方を間違えると不自然な日本語になってしまいます。
ここでは、文法的な違いとビジネスメールでの使い分け方を整理していきましょう。
結論から言うと、補助動詞なら「いたします」、本動詞なら「致します」が正解です。
補助動詞「いたします」と本動詞「致します」の違い
まず、補助動詞と本動詞の違いを簡単に説明します。
補助動詞とは、ほかの言葉(名詞や動詞)を補って丁寧に表現する役割を持つ動詞のことです。
一方、本動詞はそれ自体で意味を持ち、行為そのものを表します。
たとえば、「ご報告いたします」は「報告」という行為を丁寧に伝えるための補助動詞です。
一方、「努力を致します」は「努力する」という動作をそのまま表しているため、本動詞として使われます。
| 種類 | 表現例 | 意味 | 正しい表記 |
|---|---|---|---|
| 補助動詞 | ご連絡いたします | 相手への敬意を示す | ひらがな |
| 本動詞 | 努力を致します | 行為そのものを表す | 漢字 |
つまり、「ご案内いたします」「退室いたします」などは補助動詞の形なので、ひらがな表記が正解になります。
このルールを覚えるだけで、ほとんどのビジネス敬語は正しく書けるようになります。
文化庁が示す正しい表記ルール
文化庁の「敬語の指針」では、補助動詞や助動詞は原則としてひらがなで書くと明記されています。
理由は、ひらがなのほうが読みやすく、意味の流れを自然に伝えられるからです。
特にビジネスメールでは、漢字を多用すると堅苦しい印象になりがちです。
相手にやわらかく、丁寧に伝えたいときこそ、「いたします」とひらがなで書くのが望ましいですね。
| 文化庁の推奨ルール | 具体例 |
|---|---|
| 補助動詞・助動詞はひらがなで書く | ご報告いたします / ご案内いたします |
| 本動詞は漢字でも可 | 努力を致します / 精進を致します |
つまり、文中の「〜いたします」はほぼすべて補助動詞です。
迷ったら『いたします』に統一しておくのが安全で自然です。
ビジネスメールで迷ったときの判断基準
では、実際のビジネスシーンではどのように判断すればよいのでしょうか。
ポイントは、「動作を補っているのか」「行為を直接表しているのか」を見極めることです。
具体的な判断基準を以下の表にまとめました。
| 使用シーン | 正しい表現 | 理由 |
|---|---|---|
| メールの挨拶 | ご連絡いたします | 補助動詞(相手への敬意) |
| 報告・案内 | ご報告いたします | 補助動詞 |
| 決意表明 | 努力を致します | 本動詞(行為の強調) |
| 謝罪文 | お詫びいたします | 補助動詞(丁寧表現) |
このように、相手に行為を伝えるときは「いたします」、自分の決意を強調したいときは「致します」を選びます。
ただし、実際のビジネスメールの9割以上は補助動詞の形なので、「いたします」だけで十分に自然です。
特に若手社員や就活生は、漢字を使いすぎると堅苦しい印象になりやすいため注意しましょう。
「失礼いたします」と「失礼します」の丁寧さの違い
「失礼いたします」と「失礼します」は、どちらも相手に対して礼儀を示す言葉ですが、敬語の種類と丁寧さのレベルが異なります。
場面によって使い分けることで、より自然で印象の良い日本語を使うことができます。
ここでは、両者の違いと使い分けのコツをわかりやすく見ていきましょう。
謙譲語と丁寧語の関係を簡単に説明
まず、「失礼いたします」は謙譲語、「失礼します」は丁寧語に分類されます。
謙譲語とは、自分の行動をへりくだって表現し、相手を立てるための敬語です。
一方、丁寧語は、聞き手に対して丁寧な言い方をする敬語で、あいさつや日常的な会話でよく使われます。
つまり、「失礼いたします」はよりフォーマルで、「失礼します」はカジュアルな印象になります。
| 表現 | 敬語の種類 | フォーマル度 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| 失礼いたします | 謙譲語 | 高い | ビジネス・公式の場面 |
| 失礼します | 丁寧語 | 中程度 | 社内やカジュアルな場面 |
この違いを理解すると、シーンに合わせて自然に敬語を使い分けられるようになります。
フォーマルな場面では「失礼いたします」、社内では「失礼します」が基本です。
フォーマル・カジュアルでの使い分けシーン
それでは、実際の会話やメールの場面でどのように使い分ければよいのかを見てみましょう。
以下の表に、典型的なシーン別の例をまとめました。
| シーン | 適した表現 | 解説 |
|---|---|---|
| 取引先へのメール | 失礼いたします | 最も丁寧な表現。ビジネスメールの締めに最適。 |
| 上司の前で退室 | 失礼いたします | 敬意を示すため、謙譲語を使うのが望ましい。 |
| 同僚の前で席を立つ | 失礼します | 軽いあいさつとして自然。 |
| 社内チャットでの返信 | 失礼します | 形式ばらず、柔らかい印象。 |
このように、相手との関係性や状況のフォーマル度によって使い分けるのがマナーです。
特にビジネスメールでは、常に「失礼いたします」とひらがなで書くのが無難です。
メール・電話・退室など場面別の実例
ここでは、実際のシーンごとに正しい言い方を紹介します。
一言変えるだけで印象が大きく変わります。
| 場面 | 正しい表現 | ポイント |
|---|---|---|
| メールの締め | それでは、失礼いたします。 | 文末のあいさつとして最適。 |
| 電話を終えるとき | 本日はありがとうございました。失礼いたします。 | 相手への感謝を添えるとより丁寧。 |
| 退室時 | それでは、失礼いたします。 | 上司や来客の前ではこちらを使用。 |
| 社内での一言 | お先に失礼します。 | 日常的なやり取りではこれで十分。 |
もし迷ったら、「公式な場では『いたします』、社内では『します』」と覚えておくと便利です。
相手への敬意を伝えたいときは『いたします』がベストです。
自然で上品な言葉づかいは、信頼される社会人の第一歩です。
よくある誤用「お願い致します」などの正しい表記
「失礼いたします」と同じように、「お願い致します」「よろしく致します」と書いてしまう人も多いですよね。
しかし、これらも実は誤りで、正しくは「お願いいたします」とひらがなで書くのが正しい表記です。
ここでは、特に間違えやすい「お願い致します」などの表現を整理し、正しい使い方を紹介します。
「お願いいたします」と「お願い致します」の違い
「お願い致します」と「お願いいたします」は、見た目は似ていますが意味と文法が異なります。
「お願いする」という動作を丁寧に表す場合は、補助動詞「いたす」を使うので、ひらがな表記が正解です。
一方、「致す」は本動詞で、「行う」「実行する」という意味を持つため、この文脈では不自然になります。
つまり、正しい敬語表現は「お願いいたします」です。
| 表現 | 正しい? | 理由 |
|---|---|---|
| お願いいたします | ◎ 正しい | 補助動詞「いたす」はひらがなで書く |
| お願い致します | △ 誤用 | 本動詞「致す」はここでは使わない |
| お願い到します | ✖ 完全な誤り | 「到」は「到着」「到達」の意味しか持たない |
「お願い致します」でも意味は通じますが、文法的には正しくありません。
特にビジネス文書や公式なメールでは、細かな言葉づかいが印象を左右します。
正しくは必ず『お願いいたします』と書くようにしましょう。
正しい敬語チェックリストと書き換え例
次に、誤用されやすい敬語を一覧にして、正しい書き換え方をまとめました。
これを見ながら、普段のメールをチェックしてみましょう。
| 誤用 | 正しい表現 |
|---|---|
| ご確認致します | ご確認いたします |
| ご案内致します | ご案内いたします |
| ご報告致します | ご報告いたします |
| よろしく致します | よろしくお願いいたします |
| 退席致します | 退席いたします |
見てわかるように、「致します」と漢字にしてしまうケースが非常に多いです。
しかし、これらの「する」はすべて補助動詞の使い方なので、ひらがなで書くのが正解です。
迷ったときは、ひらがなに統一すれば間違いなしと覚えておくと安心です。
自然で好印象な敬語を使うためのコツ
敬語を正しく使うことはもちろん大切ですが、「丁寧すぎて不自然」にならないこともポイントです。
たとえば、「お願い申し上げます」「致します」「いたします」などを同じ文中で重ねると、くどく聞こえる場合があります。
そのため、シンプルかつ自然な表現を心がけましょう。
| 悪い例 | 自然な書き方 |
|---|---|
| ご確認のほどお願い申し上げます。 | ご確認をお願いいたします。 |
| ご返信をお願い致します。 | ご返信をお願いいたします。 |
| よろしくお願い申し上げます。 | よろしくお願いいたします。 |
「申し上げます」は、さらに敬意を込めたいときに使う表現ですが、多用すると硬すぎる印象を与えます。
取引先や上司など、フォーマルな相手には「お願いいたします」、同僚や社内メールでは「お願いします」と柔らかく使い分けましょう。
正しい敬語は『形』だけでなく『バランス』も大事です。
相手との関係性に合わせた自然な言葉づかいを意識することで、印象が大きく変わります。
まとめ|正しい「いたします」の使い方を身につけよう
ここまで、「失礼いたします」「失礼致します」「到します」の違いや、「いたします」と「致します」の使い分けを解説してきました。
どれも似た言葉ですが、意味や文法が異なるため、正しく使い分けることが大切です。
最後に、この記事のポイントを整理しておきましょう。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 正しい表記 | 「失礼いたします」が正解。「致します」や「到します」は誤り。 |
| 文法の違い | 「いたします」は補助動詞(ひらがな)、「致します」は本動詞(漢字)。 |
| 誤変換に注意 | 「到します」は変換ミス。送信前にチェック。 |
| メールでの基本 | ビジネス文書では「いたします」に統一が安全。 |
| 関連表現 | 「お願いいたします」「ご報告いたします」なども同じルール。 |
正しい敬語の使い方を理解することは、単なるマナーではなく、相手に信頼されるための大切なスキルです。
特にメールや文書では、一文字の違いが印象を左右することもあります。
だからこそ、変換のクセに頼らず、自分の手で正しい言葉を選ぶ意識が大切です。
もし迷ったら、「ひらがなで書くほうがやわらかく丁寧」と覚えておきましょう。
「いたします」に統一するだけで、文全体の印象がぐっと自然で上品になります。
言葉づかいを整えることは、自分の印象を整えることにもつながります。
今日から少しずつ、「正しい日本語」を意識してみてください。
それだけで、メールや会話での印象が確実に変わっていきます。
「失礼いたします」と美しい言葉を使える人こそ、信頼される社会人です。